特記事項

最終更新日:2024年7月26日

当研究室の 池松 泰彦 准教授が国際会議 APKC 2024 で論文賞を受賞

(2024年7月26日掲載)

当研究室の 池松 泰彦 准教授が、2024年7月に開催された国際会議 APKC 2024(The 11th ACM ASIA Public-Key Cryptography Workshop)で Best Paper Award(最優秀論文賞)を受賞しました。

APKCは、国際学会ACMが主催しアジア圏を中心に開催される情報セキュリティ系国際会議ACM ASIACCSの併設ワークショップとして毎年開催されている、主に公開鍵暗号分野に関する国際会議です。 APKC 2024では全部で6件の論文が採択され、池松准教授が筆頭著者として発表した論文(NTT社会情報研究所 秋山氏との共著)が唯一の受賞論文でした。 今回の受賞論文では、米国NISTによる耐量子計算機署名方式の追加公募(2022年)に応募された多変数多項式型の電子署名方式SNOVAに対する従来よりも詳細な理論的安全性評価を行い、上記応募におけるSNOVA方式の提案パラメータの一部がNISTの要求する安全性レベルを達成できていないことを明らかにしました。

上記の受賞論文は、暗号技術の国際的な標準化活動に対して数学の専門的知見に基づく安全性評価の改善という観点で貢献するものであり、当研究室(先進暗号数理デザイン室)の理念を体現しています。

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当研究室の 縫田 光司 教授を共著者とする論文が国際会議 EUROCRYPT 2024 に採録

(2024年7月26日掲載)

当研究室の 縫田 光司 教授を共著者とする論文(産業技術総合研究所 江利口氏(主著者)、茨城大学名誉教授 黒澤氏との共著)が、2024年5月に開催された国際暗号学会IACR主催の国際会議 EUROCRYPT 2024 に採録されました。 EUROCRYPTは、同じくIACR主催国際会議であるCRYPTO、ASIACRYPTと並び、暗号理論分野におけるトップ国際会議の一つです。

本論文の主題は、共通のデータベースが格納された1台または複数台のサーバとユーザが通信して所望のデータベース項目を取得する状況で、当該項目の位置情報をサーバ側に秘匿しつつ正しい項目を取得する秘匿情報検索(private information retrieval, PIR)技術です。 同技術では一般に、サーバ側が常に適正な返答を行う状況(受動的安全性)と、故障やサイバー攻撃などの影響で一部のサーバが適正な返答を行わない状況(能動的安全性)が想定されます。 本論文では、比較的弱い安全性である受動的安全性のみを有するPIRプロトコルを、より強い安全性である能動的安全性を有するPIRプロトコルへと変換する汎用的手法を新たに提案しました。 特に、従来の類似手法では変換に伴うプロトコルの通信量の増加度のみを考慮し計算量の増加の多大さを考慮できていなかったところ、本提案手法では通信量に加えてプロトコル中の計算量も増加しすぎない形でプロトコルの変換を可能としています。

PIRは、情報の利活用とプライバシー保護を両立する暗号技術として近年注目を集めている秘密計算技術の一種です。 当研究室では上記成果を礎として、近年の社会的なプライバシー意識の高まりに応えられる安全で効率的な秘密計算技術の実現と社会展開に向けて今後も一層の研究活動を進めてまいります。

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当研究室学生(当時)の 中島 明 さんが国内学会 SCIS 2023 でSCIS論文賞を受賞

(2024年1月31日掲載)

当研究室卒業生の 中島 明 さん(大学院数理学府修士課程2022年度修了、指導教員:縫田 光司 教授)が、在学中(2023年1月)に国内学会「2023年 暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS 2023)」で発表した論文により、同学会の論文賞であるSCIS論文賞を受賞しました。 授賞式はSCIS 2024会期中(2024年1月23日)に行われました。

同学会は1984年以来毎年開催され今年(SCIS 2024)で41回目の開催となる、国内の暗号・情報セキュリティ分野で屈指の歴史と規模を誇る学会です。 SCIS論文賞は若手の奨励を目的として1993年に設けられた栄誉ある論文賞であり、同学会で筆頭著者として論文を発表した学生(大学院生を含む)または学部卒業後10年以内の(同賞を未受賞の)著者が対象です。 近年では毎年200件程度の対象論文の著者のうち10名程度が受賞しています(2023年は対象論文217件(当研究室調べ)中、中島さんを含む8名が受賞)。 学生だけでなく既卒の若手研究者も対象とする同賞について、今回の中島さんのように修士課程在学時の発表による受賞は特筆に値します。 なお、本学所属の同賞受賞者は2017年(山口 純平 さん、大学院数理学府(当時))以来、通算で2人目の快挙です。 今後も当研究室では、教育活動を通じて優秀な学生を多く世に送り出すという形でも引き続き社会貢献を果たしていく所存です。

(写真:授賞式で発表された受賞論文一覧のスライド)
表彰式会場での受賞論文一覧の写真

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当研究室の 池松 泰彦 助教が国際会議 WISA 2023 および国際会議 IWSEC 2023 で論文賞を受賞

(2024年1月31日掲載)

当研究室の 池松 泰彦 助教が、2023年8月に開催された国際会議 WISA 2023(The 24th World Conference on Information Security Applications)でBest Paper Award(最優秀論文賞)を、また同月に開催された国際会議 IWSEC 2023(The 18th International Workshop on Security)でBest Student Paper Award(最優秀学生論文賞)をそれぞれ受賞しました。

WISAは韓国の暗号・情報セキュリティ分野の学会や関連組織により毎年韓国で開催されている国際会議です。 暗号・情報セキュリティ分野では多くの国または地域において、その国・地域独自に定期的な査読付国際会議を主催する文化があり、WISAもそうした国際会議の一つとして国際的な地位を確立しています。 WISA 2023では全部で26件の論文が採択され、うち4件がBest Paper Awardを受賞しています。 池松助教が筆頭著者として発表した今回の受賞論文では、韓国の耐量子計算機暗号標準化プロジェクトKpqCへの応募方式の一つである電子署名方式MQ-Sign(多変数多項式暗号の一種)について、既知の攻撃手法よりも一般的な設定に適用可能な新たな攻撃手法を提示することで、同方式に安全性上の問題があることを理論と計算機実験の両面から明らかにしました。

IWSECは日本国内の暗号・情報セキュリティ分野の学会や関連組織により毎年日本国内で開催されている国際会議です。 前述のWISAと同様に、IWSECも2006年の初開催以降、各国主催の国際会議の一つとして国際的な地位を確立しており、特に近年では日本やアジア圏以外の地域からの発表論文が増加傾向にあります。 IWSEC 2023では全部で14件の論文が採択されました。 Best Student Paper Awardは学生(大学院生を含む)が筆頭著者である論文を対象とする論文賞であり、今回は池松助教らの論文(筆頭著者:古江 弘樹 さん(東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程))が唯一の受賞論文でした。 同論文では、米国NISTによる耐量子計算機暗号標準化プロジェクトにおける有力候補の一つであった多変数多項式暗号による電子署名方式Rainbowへ適用され注目を集めたrectangular MinRank攻撃について、NIST標準化追加公募への応募方式である電子署名方式MAYOおよびQR-UOVの安全性に対する影響を分析しており、両方式の実用的な安全性強度に関するより精密な評価を可能としました。

上記2件の受賞論文はいずれも、暗号技術の国際的な標準化活動に対して、数学の専門的知見に基づくより精密な安全性評価の実現という観点で貢献するものであり、当研究室(先進暗号数理デザイン室)の理念を体現しています。

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