福本 康秀教授
ミクロからマクロスケール,さらには,宙空スケールから銀河スケールにいたるまで,われわれを取り巻く世界はひも状構造に満ち満ちている.
それらは,流体の渦糸,弾性体ひも,そして,磁束管であったりするが,これら特異構造の非線形・非定常ダイナミックスと安定性が世界の形成
に大きな役割を果たしていることは想像に難くない.宇宙の秘密を解き明かし,自然を制御していく鍵の一つが渦であろう.「渦」と「波」
が流体の構成要素であるという視点から,数値計算も援用しながら,渦運動やその安定性を計算するための数学的手法の開発を行っている.
渦輪や渦管の運動速度や渦輪の3次元安定性に関しては最先端の知見を手にするまでになった.
電磁流体力学においては,磁場と渦度場には理想流体中では流れに凍結して運ばれるという共通項がある.このトポロジカル
な属性は運動量やエネルギーといったダイナミカルな属性とは明確に区別されるべきもので,前者の表現にはEuler的よりもむしろLagrange
的記述の方が優れている.流体粒子個々の運動をたどるLagrange的記述は,従来は,冗長であるとして避けられてきたが,最近,渦の運動や安定性の計算
にはより直接的で,強大な威力を発揮することに気づいてきた.Lagrange的記述によって渦運動を再構成し,それを複雑な波動乱流のモデル化につなげる
ことを目標としている.
2010年頃より,産学連携研究や異分野融合研究に取り組んでいる.化学材料メーカーとの共同研究においてマテリアルズインフォマティクスの研究に,
地盤工学の研究者や関連企業と土砂災害予測と防災の研究に取り組んでいる.地下水流のダルシ―則による解析の研究では,ヨーロッパでの産業数学ス
タディグループ ESGI135(2023.6, アイルランド)に問題提供者として招待された。