講義を終えて

「幾何学B(学部3年生)」

(1999年10月〜2000年2月)


可微分多様体論の基礎的事項について,入門的な講義を行った.講義内容は以下の通り.

第1章 準備

1. 多様体とは? 2. $C^r$ 級写像 3. ヤコビ行列と逆関数の定理

第2章 $C^r$ 級多様体と $C^r$ 級写像

1. 多様体の定義 2. $C^s$ 級関数と $C^s$ 級写像

第3章 接ベクトル空間

1. 接ベクトル空間 2. $C^\infty$ 級写像の微分 3. $C^\infty$ 級写像の局所的性質

第4章 はめ込みと埋め込み

1. はめ込みと埋め込み 2. 正則点と臨界点 3. 埋め込み定理

講義は概ね,松本幸夫著「多様体の基礎」に沿って行った.例年と異なり,前期の幾何学Aで位相空間論をかなりやっていたおかげで,多様体論についてかなり詳しい講義ができた.最後には,すべてのコンパクト多様体が次元の十分高いユークリッド空間に埋め込めるという定理まで証明できた.ただ,サードの定理ができなかったのは残念であった.本講義では多様体を天下り的に定義し,その意味や重要性についてあまり深く触れることができなかった.これについては私の力不足であった.

講義はできるだけ図を多用し,わかりやすく丁寧に説明することを心がけた.またほぼ毎回のように小テストを行い,講義の内容が理解できているかどうかの確認を行った.講義を聞いているだけだとわかったような気がしても,実際の場面で応用するとなるとほとんどの人がとまどっていたようであった.定義さえきちんと理解していればできる問題がほとんどであったにもかかわらず,小テストのできがあまり良くないことも少なからずあった.講義は集中して聞けばわかるようにしたつもりであったので,是非集中して欲しかった.なお,小テストの模範解答と解説をプリントにして毎回配った.プリントを作るのにはかなり時間を要し,雑務に追われる身としてはかなりつらいものがあったが,学生の勉強の助けにはかなりなったのではないかと自負している.

一度,小テストを行うかわりに,各学生にその日の講義に関する質問を書いてもらった.すると,意に反していい質問がかなりあった.できれば積極的に教官にコンタクトを取る等して,他の講義でも質問を是非どんどんして欲しい.講義終了後,小テストの解答を待ちながら私が教室に残っていたのは,学生からの質問受け付けの意味もあった.それを利用して質問してくれた人も何人かいて,正直嬉しかった.

成績は,出席状況,小テスト,試験,レポートをもとに評価した.試験は問題数が多くてとまどった人もいたようだったが,良くできていた人も多かった.これからも,幾何学的イメージを大切に勉強を続けていって欲しいと思う.


佐伯修の教育活動