講義を終えて
「教養ゼミ」
(1999年4月〜1999年7月)
本教養ゼミでは、柴岡泰光著「教養の数学」(東京図書,1984年)の一部をテキストとして、グラフ理論の基礎的な事柄をセミナー形式で勉強していく予定であった。しかし学生諸君と話したところ、解析学や線形代数学の講義がわからないので質問したい、という者が多く、結果としては学生側が質問し、それに対して私が答えるといった形で進んで行くことが多くなってしまった。以下が各回の内容である。
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第1回 教養ゼミの一般的説明。0.999... は 1 より小さいか等しいかという問題と、実数の話。ケーニヒスベルグの橋の問題(一筆書きの問題)の解説。
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第2回 図書館利用案内を中央図書館にて実施。
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第3回 解析学 I の講義の復習。数列の収束と発散。
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第4回 解析学 I の講義の復習。数列の収束とニュートン法。
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第5回 解析学 I の講義の復習。数列の収束と発散。
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第6回 一筆書きの話(グラフ理論)及び、関連する演習問題(学生各自による)。
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第7回 イプシロン−デルタ論法と、関数の連続性。グラフの奇点の個数に関する定理の証明(学生による)。
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第8回 解析学 I の質問。前回のグラフ理論の定理の証明の補足と応用(学生による)。
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第9回 グラフの抽象的な定義。順列グラフ・彩色グラフとそれらに関する演習問題(学生各自による)。
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第10回 テーラー展開。ロールの定理。凸関数。行列と Q[\sqrt{2}]。
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第11回 情報活用演習のレポート問題解説(数列の収束)。一筆書きの話(学生による)。
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第12回 関数の高階微分とテーラー展開。一筆書き定理の証明(学生による)。
今回は(私自身として)初めて、図書館利用案内(広島大学附属図書館で教養ゼミ用に実施しているもの)を第2回の時間帯に利用させてもらった。事前に予約を取ってゼミの時間に学生と共に中央図書館に行き、そこで図書館の職員の方に、図書館そのものや、図書の検索の仕方等について解説をしていただいた。その後の教養ゼミには直接役に立ったとは言えないが、今後図書館を利用する機会は必ずあるわけで、こうしたことも教養ゼミの一貫として行うことには意味があるのではないかと思う。
教養ゼミは、本来学生が主体となって発表を行ないながら進めてゆくものであるとは思うが、今回はそうした発表は各自1回ずつくらいとし、そのかわり数学の質問を学生から募ることとした。そのおかげで学生側から多くの質問が活発に出され、私の解答・解説中にも質問が出たりして、かえってゼミが活性化したように思う。私が話している時間が多少長くなってしまったきらいはあるが、解析や線形代数で学んでいることの背景や意味を説明することによって、今そうした講義で勉強していることは実はどういうことなのか、少しでも学生諸君にわかってもらえたのであれば幸いである。
なお、今回のゼミのメンバーの8人の学生諸君はかなり熱心にゼミに取り組んでくれた。オリキャンのビーチバレー大会での優勝チームということもあってか、なかなか元気が良かったと思う。今後もその調子で数学に取り組んで行ってもらいたいものである。