講義を終えて

「幾何学D」

(1998年10月〜1999年2月)


微分可能多様体と、その間の微分可能写像とその特異点の理論について
入門的な講義を行った。講義の内容は以下の通り。

第1章.多様体

1.逆関数の定理 2.多様体 3.接空間と写像の微分 4.サードの定理 5.1の分割 6.ベクトル場と積分曲線

第2章.写像の特異点論

1.写像の特異点論 2.ホイットニーの例 3.ジェット 4.ジェット空間 5.写像空間とその位相 6.構造安定性

第3章.トムの横断性定理

1.トムの横断性定理 2.ホイットニーのはめ込み及び埋め込み定理

前半で多様体論の基礎を復習し、後半でジェット空間などの特異点理論の話に入り、最後はトムの横断性定理とその応用で終わろう、という当初の目標は達せられたが、よく考えてみるとこれでは前期の福田拓生先生による集中講義と内容的にかなり重なってしまったことになる。しかし、集中講義ではそれほど詳しいことはできなかったようなので、その復習の意味も込めて、この講義で学生諸君の理解が深まったのであれば幸いである。

前半部分はかなりゆっくりと、図や絵を交えながら、幾何学的な意味がはっきりするようにと講義をしていったので、かなりの学生が理解してくれたようであった。こちらとしては嬉しかった。後半の特異点論の話になると、ジェットという対象がやはり難しいようで、多くの学生が理解するのに苦労していたように感じた。でも、特異点理論がだいたいどういうことを、どんな風なアイデアで研究しているか、その一端くらいはわかっていただけたと思う。

成績は、講義中に出した問題の解答をレポートとして提出してもらい、それをもとにつけた。予想より多くの人(13人)がレポートを提出してくれた。問題は全部で32問出したが、中にはそのうちの24問も解いてくれた学生もいて、驚いてしまった(もちろん嬉しかった)。

この講義は4年生向けの講義ということもあって、当初は出席者がそれほどいないのではないかと危ぶんでいたが、結局最後まで多くの人が聞いてくれて、正直言ってほっとしている。出席してくれた学生諸君、どうもありがとう!これからも幾何を勉強する人は、常に幾何的イメージを大切に勉強していってください。


佐伯修の教育活動