講義を終えて
「教養ゼミ」
(2001年4月〜2001年7月)
本教養ゼミでは,テキストとして,ラスロウ・ロバース他著『入門 組合せ論』(共立出版,1985年)を用いて,集合論の基礎を学習してゆく予定であった.しかし,学生諸君から,数学の他の講義に関する質問を毎回受け付けているうちに,いつの間にか,そうした質問とそれに対する解答と解説でゼミが終始する結果となってしまった.以下が各回の主な内容である.
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第1回 教養ゼミの一般的説明.上記テキストを使って,集合の包含関係などについて学習.「集合全体からなる集まりは集合か?」の問題提起.
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第2回 解析学 I 演習の問題の解説.$\displaystyle{\bigcup_{i=1}^n B_i}$の意味の解説と,$\displaystyle{A
\cap \left(\bigcup_{i=1}^n B_i \right)= \bigcup_{i=1}^n (A \cap B_i)}$
の,帰納法による証明や,分配法則との関係.補集合についても学習.
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第3回 上記テキストを使って,集合の演算について学習.
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第4回 有理数全体よりも大きく,実数全体よりも真に小さい集合で,四則演算について閉じているものの例.行列の指数関数について.
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第5回 解析学 I の中間試験前日.上界・下界・上限・下限・収束の復習.
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第6回 解析学I演習のプリントの解説.上限・下限・極限等.
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第7回 はき出し法による逆行列の求め方.数列の極限.連立一次方程式について.
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第8回 交代行列・対称行列.数列の極限.
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第9回 上限,数列の極限.関数の連続性と $\varepsilon$-$\delta$ 論法.
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第10回 素因数分解と,$\sqrt{p}$ が無理数であることの証明.連続関数の合成.行列の階数.
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第11回 単射・全射・逆写像.
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第12回 不連続な関数の例.ロールの定理・平均値の定理・テイラーの定理.さらに,授業アンケートも行った.
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第13回 単調増加関数の逆関数は単調増加.逆関数の微分.テイラーの定理.ラグランジュの剰余・コーシーの剰余.
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第14回 有理関数の部分分数分解.実多項式の因数分解.下に凸な関数.教養ゼミに対する各学生の感想の表明.
教養ゼミは本来,学生が主体となって発表を行ないながら進めてゆくものであるとは思うが,今回はそうした発表は特にしてもらうことはせず,質問自体を黒板を使って説明してもらう程度にとどめた.すると,私が予想した以上に学生側から多くの質問が活発に出され,かえってゼミが活性化したように思う.私が話している時間が多少長くなってしまったきらいはあるが,解析や線形代数で学んでいることの背景や意味を説明することによって,今そうした講義で勉強していることは実はどういうことなのか,少しでもわかってもらえたのであれば幸いである.
ゼミの最終回に,一人一人に感想を表明してもらったが,数学の他の講義の理解の助けになって良かったという声が多かった.また,これは私自身まったく予想していなかったのだが,人数が少ないので,先生や友達の説明の声が良く聞こえるし,黒板も見やすい,というものがあった.また,これは私の担当したゼミに限らないことであると思うが,ゼミの雰囲気が良く,友達作りに役に立ったという声もあった.なお,朝の1コマ目にゼミがあることに関しては,否定的意見が多かった.また,もっと各学生に対して声をかけて欲しかったという感想もあった.反省したいと思う.
なお,今回のゼミのメンバーの8人の学生諸君は,遅刻や欠席もほとんどなく,ゼミ中に活発に質問をしたり議論をしてくれたりして,かなり熱心にゼミに取り組んでくれた.これからは教養ゼミのような講義は4年生までないけれども,今後もその調子で,積極的に数学に取り組んで行って欲しいと思う.