プログラム

数学ソフトウェアの開発と実践--その現状と未来--

講演&質疑応答40分, 休憩10分.

 9月9日(月)

 開場:14:50


  • 15:00〜15:40 

    川野 健一(MOST合同会社)

  • 15:50〜16:30

    齊藤 秀(インフォコム株式会社)

  • 16:40〜17:20 

    福山 和男(TOA株式会社)

    • Mathematicaを使った「ホーンアレイスピーカーの距離減衰計算と防災放送で発生するエコーシミュレーション」 アブストラクト
  • 17:30〜18:10 

    岩根 秀直 (株式会社富士通研究所)

    • 限量記号消去法とその応用  〜ものづくりの最適化への適用と入試問題への挑戦〜 アブストラクト
 9月10日(火)

  • 10:00〜10:40 

    土村 展之(関西学院大学)

  • 10:50〜11:30 

    太田 洋二郎(株式会社構造計画研究所)

アブストラクト

  • 川野 健一(MOST合同会社) 品質工学を応用した官能評価の定量化
    • 21世紀に入り品質工学はハードのみでなく、ソフトの設計等にも応用されており、その代表としてパターン認識や予測等の技術として頻繁に使用されているMTシステムがある。弊社では、製造業における熟練者が視覚や聴覚により行う検査等、部外者には簡単にマネができない技能を要する官能評価を、MTシステムを応用した定量評価に進化させることで、双方の強みを合わせた画期的な評価方法を実現し、日本のモノづくりの更なる発展に貢献したいと考えている。
      本公演では、①品質工学の概要及びMTシステムの特徴について、②定量評価のポイントとなる特徴量数値化の考え方について、③定量評価の実現手段としての要件を満たすプログラム言語であるMATLAB及びそのプログラム例について紹介する。
  • 齊藤 秀(インフォコム株式会社) 数学ソフトウェアとビッグデータ・クラウドソーシング
    • 近年、大量/非構造/即時生成データ、いわゆるビッグデータの産業的活用が期待されている。しかしながら、革新的な活用事例が多数創出され、ビッグデータ利活用が円滑に進んでいるとは言い難い。その主たる要因は、データサイエンティストと呼称されるデータ分析・活用のスペシャリストの絶対的不足にあると指摘されている。データサイエンティストは、業務上の目的とビッグデータを数理的に結び付け活用することを業務とするが、その際、アクセス可能な数学ソフトウェアの駆使、場合によっては自身で目的達成のためのアルゴリズムの設計・開発が要求される。加えて、高度なITエンジニアリングおよび業務知識が要求されることから、該当人材はおのずと少なくなる。このようにすぐには解決に至らない人的問題に対する1つのアプローチとして、最近利用が促進されているクラウドソーシングに代表されるヒューマンコンピュテーションがあげられる。今年2月にデータ分析のためのクラウドソーシングサービスCrowdSolvingが開始され、数学ソフトウェアの活用実態が明らかになることが期待される。今後、時代の推移に伴い数学ソフトウェアの位置づけはますます重要となると考えられるが、求められる要件はこのようなヒューマンコンピュテーションの中で明確化されていくのではないかと考える。
      本講演では、演者の数学ソフトウェアの開発・活用の経験から、ビッグデータにおける数学ソフトウェアの位置づけ、ビッグデータへのヒューマンコンピュテーションによるアプローチ、そこから得た知見の数学ソフトウェアへの還元等について述べる。
  • 福山 和男(TOA株式会社)  Mathematicaを使った「ホーンアレイスピーカーの距離減衰計算と防災放送で発生するエコーシミュレーション」
    • 線音源の距離減衰をMathematicaを使って理論計算を行い、新しく開発した平板スピーカーユニットを線状に並べて距離減衰を無響室(距離5m)で測定した結果、計算と実測が一致した。これにより複数のホーンスピーカーを線状に並べたホーンアレイスピーカーの到達距離(数km)が推定できるようになった。現在、防災放送用遠距離スピーカーシステムを構成し、東日本大震災以降の防災放送システムに採用されている。 また、従来の防災放送で問題となっている、複数エリアの放送が被ってエコーを作る現象もMathematicaでアナウンス音を合成して、この問題の確認に使っている。風向風速データもMathematicaで収集できるので音達実験を行う時の影響を考慮することに役立っている。今後は、風速勾配、温度勾配も含めたシミュレーションを行う予定です。
  • 岩根 秀直 (株式会社富士通研究所) 限量記号消去法とその応用  〜ものづくりの最適化への適用と入試問題への挑戦〜
    • 数式処理手法のひとつ限量記号消去法(Quantifier Elimination: QE) は多項式の等式・不等式を原子論理式とする一階述語論理式から限量記号がついた変数を消去し,入力と等価な論理式を計算するアルゴリズムである.一階述語論理式は豊かな記述能力を持つため, 制約充足問題や最適化問題など広範囲の重要な応用問題に QE を適用することができる. また誤差のない計算により,数学入試問題を正確に解くことができるという特徴を持つ.
      本講演では,(株)富士通研究所で開発している QE ツール SyNRAC と,社内のものづくりにおける最適化問題への適用事例,国立情報学研究所の人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」数学チームにおける取り組みについて紹介する.
  • 土村 展之(関西学院大学) 離散凸関数の最小化ソルバODICONの開発
    • 離散凸解析の成果である、離散凸関数最小化アルゴリズムを実装して、ODICONと名付けて公開している。開発に至った動機、開発の苦労、工夫などを紹介する。以前に開発したアルゴリズムデモなどでの経験も含めて、数学ソフトウェアを魅力的に見せる難しさを考えたい。
  • 太田 洋二郎(株式会社構造計画研究所) OR手法を適用したソフトウェア開発と様々な産業分野への応用
    • 様々な産業分野における研究開発上や運用上の諸問題に対し、最適化、シミュレーション等のオペ-レションズ・リサーチ(OR)手法による意志決定支援が有効な場面が多くある。製造、物流、サービス、通信、電力、建設、官公庁等の様々な分野、異なる目的に応じて最適なOR手法を適用し、利用者にとって使いやすいソフトウェアを開発することで顧客の課題解決を支援した多くの事例の中からいくつかを紹介する。