雑文

以下は以前、多様体論の講義を行った際に学生に配布したプリントからの転載です。
プリントの主目的は、講義の補足 や演習問題等でしたが、余った余白を埋めるために
Coffee Break と称して、自分のつたない文章を書いたものです。




指導教員の話

そろそろ皆さんも4年生になってからの卒業研究の指導教官を決める時期になってきましたね(ただし、一部の人を除く)。

私にももちろんそういう時期がありました。私が3年生の頃は、「自主ゼミ」という講義(?)があって、学生が3人ほど集まって、ひとつの本をセミナー形式で読んで行き、それに指導教官が一人ついていて、なぜか単位がもらえる、というとても良い講義でありました(指導教官と言ったって、セミナーには一度も顔を出してくれませんでしたが)。

それで私は微分幾何学の本を友達と読んでいました。大学の1年生のときにやった「図学」(今でもあるのかどうかわかりませんが、設計図の図面を描くための講義でした)のときに聞いた曲率の話しが面白くって、それで微分幾何を選んだわけです。それで4年生になっても微分幾何学をやろうかなと思っていました。ところが、幸か不幸か、その微分幾何をやって下さる先生の人気がとても高く、軟弱な私はあきらめて、他の幾何の先生を探すことにしました。幾何にはその当時、他に3人ほどの先生がいたのですが、そのうち2人には講義を担当してもらって、なんとなく恐い印象があったので、優しそうなもう1人の先生につくことにしました。今から考えても、どうしてそんなに甘い選び方で指導教官を選んでしまったのか、自分でも不思議ですが、それが私のその後の人生に大きな影響を及ぼすとは、そのときは思ってもいなかったわけです。

今から考えると、その指導教官(「多様体の基礎」を著わした松本幸夫先生です)を選んだのは大正解でした。その先生のやっていた数学が私のやりたかったこととうまくマッチして、うまく研究をすすめて行くことができたのです。それに同じ指導教官のもとで勉強していた、先輩や仲間の友達にも大変お世話になりました。

まあ、人生なんてそんなものかも知れません。でも、指導教官選びって、結構大事なことです。皆さんも良く考えて選びましょう。