講義を終えて

「数学通論(学部2年生)」

(2000年4月〜2000年7月)


距離空間及び位相空間の理論の基礎的事項について入門的な講義を行った.講義内容は以下の通り.

第0章 復習

第1章 距離空間

1. 定義と例 2. 球体と球面 3. 有界集合 4. 集合間の距離

第2章 連続写像

1. 定義と例 2. 連続写像の性質 3. 同相写像 4. 同値な距離

第3章 位相

1. 開集合 2. 開集合と連続性 3. 位相空間 4. 閉集合

第4章 極限

1. 点列の極限 2. 点列の収束と位相

第5章 距離空間の完備性

1. コーシー列 2. 完備距離空間 3. 縮小写像の原理 4. 距離空間の完備化

第6章 距離空間のコンパクト性

1. コンパクト集合 2. コンパクト距離空間の特徴づけ

教科書として,内田伏一著「集合と位相」(裳華房)を指定したが,実際には講義時間中にできなかった定理や命題の証明を参照してもらう程度にしか利用しなかった.

中間試験を6/2に,期末試験を7/21に実施したほか,講義の最後に毎回小テストを行った.小テストに関しては,前回の講義を復習してあるか,あるいはその時間の講義内容の大事な部分をある程度理解していれば十分にできるような,比較的容易な問題を用意し,なおかつヒントもかなり与えたつもりであったが,あまりできの良くない時も残念ながら多かった(なお小テストの採点についてはTAの脇君に大変お世話になった.この場を借りて感謝したい).中間試験については勉強のしかたが分からなかったせいかあまりできは良くなかった(平均46点)が,期末試験の成績は概ね良く(平均64点),学生諸君の勉強の成果が現れていたように思う.

講義に関する感想を最終回に書いてもらったが,小テストのための時間をもっと取って欲しいという要望の他は,割りと分かり易い講義であったという感想が目立った.特に,毎回の講義の最初に前回の復習をしたことと,講義を補足するためのプリント(小テストの模範解答も含む)を毎回配ったのが良かったようであった.ただ講義をした者の立場から言わせてもらうと,毎回復習から入ることで講義時間がかなり減り,当初予定していた内容を消化するために,講義を補足するためのプリントに頼らざるを得なくなり,その準備のためにかなり苦労を強いられてしまった.

なお,距離空間・位相空間の理論は,幾何学のみならず数学の様々な場面で重要になるものではあるものの,それを習得するには図を多用することが大変役に立つように思う.講義でもそのような説明をでき得る限りしたつもりである.式や抽象的な概念を理解するために,自分なりに図を描いて考えることも学生諸君には是非覚えて欲しいものである.


佐伯修の教育活動