1. 3次元モデリング・解析システム『siren』
    山口大介(株式会社エス・イー・エー創研)
    概要: siren は、3次元幾何ライブラリーの Open CASCADE Technorogy とフレンドリーでパワ フルなプログラミング言語 Ruby を組み合わせた、シンプルかつプログラマブルなモデ リング&解析システムです。 図面を取り扱う製造業で使用される曲面・曲線表現 NURBS を扱うことができ、幾何学 ・位相幾何学を駆使した形状表現・幾何演算(交点、交線計算、最近点算出、形状同士 のブール演算など)が可能です。 オープンソースプロジェクトのため、誰でも無料で入手でき、カスタマイズも可能で す。配布パッケージを解凍するだけで、すぐにスクリプトを書くことができ、モデリン グした形状を多くの CAD、CAE、CG システムと相互でやりとりすることが可能です。 また、モデリングだけでなく、ドローンや自動運転車の衝突判定といったシミュレー ション用途にも用いることができます。
  2. 証明付レンガ型Wangタイリングプログラムの実装
    松嶋聡昭(九州大学大学院数理学府)
    概要: 我々は, 境界条件付きの長方形領域において"レンガ模様"を作成するための, 証 明付きWangタイリングプログラムの実装に成功した. レンガ型Wangタイル集合は, 特別な性質を持ったWangタイルの集合であり, 2015 年にA. Derouet-Jourdanによって, コンピュータグラフィクスで壁の模様を生成 するツールとして紹介された. 我々は, その集合に含まれるタイルのみを用いて タイリングを行うプログラムを, Coq定理証明支援システムで実装し, 計算結果 の正当性も証明した. この解が正しいという事実を用いれば, 2×2以上の任意の 大きさの長方形領域に対し, レンガ模様になるようなタイリングが存在するとい うことも示すことができる. ちなみに正当性の証明は, まず2×2の正方形におい て計算結果が常に正しいことを示し, それを帰納法によって拡張するという手続 きで実行した.
  3. 計算折り紙の定式化と折り操作の Mathematica 言語による実装
    松尾拓哉(九州大学大学院数理学府)
    概要: 折り紙は厚みを無視した剛体と考えると, 2次元上の平面図形として厳密に計算出来る. 2次元計算折り紙の計算は幾何証明にも応用される. 3次方程式の解を用いるような作図も可能であるため, 伝統的な定規とコンパスによる作図では不可能である角の三等分線の作図を行うことができる. 今回私は Wolfram Mathematica 上で, 数式による折り紙設計の定式化と3次元折り紙への拡張を目的とした, 2次元計算折り紙のモジュールの実装を行った. 計算折り紙のデータ構造は,折り紙を構成する面の集合に加え, 面の横のつながりと縦の重なりを表す関係を導入し, 折り紙グラフと呼んでいる. 折り操作の関数は, 大きく分けて面の分割操作と回転操作から成り立っており, ユーザの指定にあわせて折り紙グラフの情報を更新する. 藤田と羽鳥の示した7つの基本的な折り方を利用して, 点や直線を用いた条件から折り線を導出する関数も用意している.
  4. Graphの距離に関する色分けと3Dグラフィックス表示
    高坂太智(九州大学大学院数理学府)
    概要: 代数的graph理論において, 組み合わせ論的対称性を持つgraphは数学的に重 要な対象として扱われてきた. デザイン理論, 符号理論とも深く関係している graphとしてdistance regular graphというgraphが知られており, 近年でも盛ん に研究されている. Distance regular graphをさらに一般化したものとして, highly regular graphというgraphが知られているが, distance regular graph に比べhighly regular graphの先行研究は少ない. そこで, highly regular graphに対して, distance regular graphかどうかの判定及び, その組み合わせ 論的性質の発見を目的としてmathematicaを用いて次のようなプログラムを実装 した. 与えられたgraphに対して, 距離に関する頂点集合の色分け及び, その色 分けを反映した3Dグラフィックスを表示する.
  5. Visualizing Singular Fibers – UI & Impacts –
    (Daisuke Sakurai (RIKEN), Osamu Saeki (Kyushu University), Hamish Carr (University of Leeds), Hsiang-Yun Wu (Keio University), Takahiro Yamamoto (Kyushu Sangyo University), David Duke (University of Leeds), Kenji Ono (RIKEN), and Shigeo Takahashi (University of Aizu)
    概要: Visualizing contour lines (or level sets) provides insights about smooth functions and scalar fields. So does visualizing fibers - a generalization of level sets to smooth mappings and multi-fields - although this has been manual and challenging. To address the problem, we visualize fibers semi-automatically to support mathematical studies and data analysis. We demonstrate our user interface, which has been published in the visualization community. The key is to identify the singular fibers, which tell us the topological changes of fibers. Our user interface displays the singular fibers by mapping them to the range, so that the user can track the topology of fibers at a glance. In order to provide the details of the topological changes, the mapped singular fibers are given different colors indicating their types. These types follow the classification of singular fibers by Takahiro Yamamoto and Osamu Saeki, which is based on the singularity theory of differentiable maps. Together with the user interface itself, we present its impacts, such as visually verifying a degeneracy predicted in mathematics, and analyzing climate data using fibers.
  6. kissing numberの上界を与える最適化問題について
    鈴木信之介, 上山泰史(九州大学理学部数学科)
    概要: kissing numberとはn次元単位球面に互いに交わらずに外接させることのできる最大のn次元球の個数のことである.DelsarteやBachoc, Vallentinによる研究によって,このkissing numberの上界を与える線形計画問題(LP)や半正定値計画問題(SDP)が提案されている.ただ単に点をプロットしてLPやSDPの形にするだけではこの問題の正しいと思える数値は出てこない.本研究ではDelearteによるLPは同値なSDPに書き換え,またBachnoc, VallentinによるSDPに関しては,定式化を提案し最適化ソフトウェアによって実際に求めまた,それらの問題の性質を調べた.
  7. RocSampler : クラスター間重複を制御するタンパク質複合体の予測アルゴリズム
    桑原雄貴(九州大学大学院数理学府)
    概要: 生体内のタンパク質の多くは、タンパク質の集合体であるタンパク質複合体を形 成しその機能を果たすことが知られている。本発表で説明するRocSampler (Regularizing overlapping protein complexes) は、タンパク質間相互作用 ネットワークからタンパク質複合体の予測を行うアルゴリズムである。 RocSamplerは、マルコフ連鎖モンテカルロ法に基づくアルゴリズムであり、予測 タンパク質 複合体の集合に対する評価関数の最小化を行う。既存のタンパク質 複合体の予測手法には、間接的に予測タンパク質複合体間の重複を許したものが ある が、RocSamplerは予測タンパク質複合体間の重複を直接モデル化している 最初の手 法である。本発表では、RocSamplerのアルゴリズムを説明し、その予 測精度が他の 既存の予測手法より優れていること及びRocSamplerが重複したタ ンパク質複合体を 予測した具体例を示す。